企業経営の課題解決によって、企業の成長を支援

イベント報告

私の主張 日刊工業新聞 2011年9月19日

2011/09/22

 欧州や米国の経済がおかしくなってきた。今後、5〜10年先を見通してもドルとユーロが通貨安競争を繰り広げる中では、円安に向かうことはない。中小企業の経営者は国内市場での生き残りをかけた経営と海外展開の加速が求められてくる。

迫られる海外展開
 今年7月後半に、ある講演会で原価管理の話をしたら、名古屋の部品メーカーの人が来て、来期は自動車メーカーから3割のコストダウンを要求されているとのことで、3%の間違いではないかと我が耳を疑った。その話を私が教えている日本工大の技術経営大学院の卒業生の金型メーカーの社長に話したら、「3割カットでも話がくるだけましですよ」とのことだった。見放されたら、話そのものがこないというのである。
 既に量産拠点は海外に移り、国内は、開発試作品や特殊な技術を要求される製品に特化した生産が当たり前になっている。こうなると特に中小の製造業は生き残りをかけた研究開発と海外生産の本格化が求められる。そこでのキーワードは、グローバル経営とオープンイノベーションだ。
 グローバル展開する人材をどう育成するか、戦略的に重要である。笑えない話だが、アジアに展開している日本の製造業の生産現場を訪ねた折、最も大変なことは何かと聞いたら、こんなに多くの従業員を管理したことは日本ではなかったという。植民地経営を経験している欧米と比べると宗教や文化的背景が違う外国人相手のマネジメントの極意を日本は見いだしていない。今後は英語でのコミュニケーションはもとより、どういう管理を行うか定石をマスターして、それに創意工夫を加えながら身をもって経験していく必要がある。

 外部の資源活用を
 オープンイノベーションは、技術革新と製品化を自社だけはなく、外部を取り込んで進めていくというシリコンバレー発のビジネスモデルである。日本でも大田区や東淀川の中小企業の集積地では、顧客ニーズに応じて他社の技術や経験を取り入れるというのはやられてきた。今後求められるのは、お互い顔見知りの中でやるオープンイノベーションから、世界を相手の他社の技術や知識を取り入れるオープンイノベーションである。技術の探索や評価はもとより、契約の知識、技術導入やM&A(合併・買収)に絡む交渉のスキルも求められる。外部資源や協業を利用して、使えるものは何でも取り込み、顧客の求める価値を製品化し、この難局を乗り切っていく必要がある。
 海外展開もイノベーションも追えない企業は、単に耐えるだけではじり貧だ。視野を広げ、他社との協業やファンドの資金などを取り入れ、業界再編も辞さず、海外展開もイノベーションも狙える体制を構築して生き延びていく必要がある。

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